十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

大丈夫。

ええ目のボルドー

昨日の夜、遅めに仕事を終えて、サイゾーを連れてとーちゃんが待つ近所のビストロに立ち寄った。喉はからから、お腹もぺこぺこなので、ちょっといただいて帰ろうかということになり、外の席で2人と一匹がテーブルを囲む。
ちょっとええ目のボルドーに喜びながら、鴨のコンフィに舌鼓。風はそんなに冷たくないし、春がひたひたと近づいているのがわかる。「気持ちええなあ」といいながら、春の気配の楽しむひととき。「でもな、とーちゃん、ワシ最近ええことなしやねん」「なんで?」「なんかなあ〜、コレっちゅうことはないねんけどなあ、上手くいかんことが多いなあ」「そうか」「そういうときがあることはようわかってるねんけどな。なんかなあ、乗らんなあ」「かーちゃん、大丈夫やで」「へ?」「どんなこともな、いつか何とかなるねん。大丈夫大丈夫」「大丈夫か?」「うん、大丈夫や」
詳しいことは何もしらないとーちゃんの「大丈夫」の一言が、ちょっとだけ私を勇気づける。「せやけどなんやな、大丈夫っていうてくれる人がそばにいるって、ええことやな」と私が言うと、「そうか?」と笑うとーちゃん。夫婦だけじゃなくて、家族でも、友達でも、会社の仲間でも、そういう人がそばにいるって、すごい幸せなことなんや。
サイゾーが「うぅ」と言って私らを見上げている。目線の先は、私じゃなくて「鴨」。「ほいほい、これか、ちょっと分けたろ」と与えると、シッポを振って喜ぶサイゾー。こうして、2人と一匹の春の夜は過ぎたのでした。