十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

世代交代を感じる犬。

コウで〜す

日曜日、ちょいと仕事しに会社に行ったら、いたのがコイツ。柴犬の子犬で、まだちっちゃいちっちゃい。「な、なんで〜?誰の犬ぅ〜??」とやや発狂気味に聞くと、うちのボスがお母さんのために飼った犬らしく、この日はお母さんが外出のため代わりに預かっているのだそう。とにかくかわいい。幼気にボスの言うままに待ち、外に出してもらえると飛び上がるように走り回るシバ。その様はまるで草原を駆け回るバンビのよう。名前はコウちゃんというらしい。「コーナンのペットショップで買うたからこの名前なんかも」てな話を聞きながら、久しぶりの愛らしい子犬にもだえる私。なんてかわいいんやろう。もうダックスの時代じゃないわ。慣れない場所というのに、それでもたくましく、それでもけなげにいるコウにノックアウトされ「またいつでもここにおいでや」と声をかけて帰った。
翌日の月曜日。いつものようにサイゾーを連れて会社に行くと、素早くサイゾーはいつもと違う空気に戸惑っている。あっちこっちを嗅ぎ回り、コウが残したオシッコの匂いを察知し、「お前、誰じゃ」と怪訝な様子。おまけに普段はほとんどしないのに、サイゾーまでオシッコをかましよる。「こら〜、何するね〜ん!!」とサイゾーを叱ってもしらんぷり。「何ですか、このガキはやってよくて、ワシはアカンっちゅーんでっか。そんなんやりきれまへんなあ」という心の声が聞こえてくるよう。しかしこの日、サイゾーは確かに落ち込んでいるような、ちょっと冷めたような態度を見せていた。
もしかしたらサイゾーは、コウが残していったオシッコからの情報で、
「ここに自分より若い犬がきた」
「そしてみんなが可愛がった。かーちゃんまでも」
「ワシがここで一番かわいい存在やったはずやのに」
「しかし自分ももう、そこまでのヤングやない」
「そろそろ路線、変えてみるか」
「。。。。大人な感じぃ?」
と売れないアイドルのような、路線変更を決めたのかもしれない。ある意味、親父としての開き直りがあったのかもしれない。あれからもう3日経つが、やっぱり何かが変わっているような気がする。吠えるしぃ、ご飯大好きやしぃ、甘えてくるけど、微妙に何か違うねんなあ。この月曜日は、サイゾーが大人への階段を一歩上がった日になったかもしれんわけです。