十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

なぜ、背中を向けているのか。

ツライチ中

「とーちゃん、そろそろツライチでいこか」と私が言うと、「お、もうそんなに減ってるんか」ととーちゃんが言う。ツライチ、それは家で泡盛を飲んでいるときにたびたび登場する言葉。わかりますかねえ、ツライチ。要は「足並みそろえて飲んでいこう」ということなんです。
毎度話に出てくるように、我が家では3合瓶の泡盛を毎月10本沖縄から取り寄せている。10本すべて同じ銘柄じゃなくて、だいたい5~6銘柄で10本になるようにいつもとーちゃんがチョイスしてくれているのだが、大抵3〜4銘柄が「これは外せん」と定番になったレギュラー枠。でそれ以外が新入りチャレンジ枠。一番好きな銘柄を3本、次のレギュラー2銘柄が各2本ずつ、これで10本中7本が確定し、残りの3本の中で1本ほど新入りがチョイスされるケースが多い。このチャレンジ銘柄が当たればレギュラーに昇格していくし、いつかの白百合のように「あ、こらアカン」となれば2度と日の目を見ることがない。我が家のチーム泡盛は、メジャーリーグのレギュラー争いよりも、阪神タイガースの1軍争いよりもキビシいのだ。(うそ)
10本届いてウハウハのときは、余裕があるので複数本あるレギュラー陣からぐいぐい飲んでいけるのだが、それが減っていくと「どれから飲んでいくか」が重要になってくる。そこでツライチ作戦が誕生した。岡田監督の采配のように、とーちゃんが「残ってるのん全部持ってきぃ」と言い、ダイニングのカウンターに飲みかけの泡盛をズラッと並べる。背中を向けさせてどの銘柄も一定量が残るようにチョイスしながら飲んでいく。どれかが飛び抜けて残っていてはいけない。好きだからといってどれかだけを飲み続けてはいけない。「じゃあ、ボク“どなん”にするわ」「じゃあ私は“琉球”で」というように、残量を合わせていく。まるでJFKが最後をビシッと抑えていくように、我が家のチームコンビネーションが問われる瞬間。(うそ)
てな風にツライチしながらも、泡盛は着実にどんどん減っていく。まだ1ヶ月経ってないというのに「もうあれへん!」となってしまうのもよくあること。そんなとき、私が星野SDのようにスパッとその問題を解決する。「補強したらええやないかぁ」。そう、新しい10本が、また我が家にやってくるわけです。