ようやく名前を呼ばれて診察室へ。案の定陽気で話の早いテンダラー、一通り話したところで「では身体を見てみますね」とさっそく触診。ヘルニアは特に異常なし、お腹や心臓も大丈夫。で、気になる目を診てもらうことに。ここのところ会社でよくぶつかってるとみんなから聞くので「あんまり見えてないのかも」と気になっていたのです。
部屋を真っ暗にして懐中電灯のようなもので片目ずつ覗き込み「あーー。うんうん。こっちも見せてね。うんうん」と診察するテンダラー。「お母さん、そうですね、特に左の目がほとんど見えてませんね」と、光を当てた眼球を見せられたところ、左目はビー玉のようにキラキラしている。「これは眼球を支える筋肉が弱ってるんです」「手術や薬で治したりは?」「無理ですね」「加齢の症状?」「そうです」なんだとか。「将来的に失明します」とはっきり言われました。
「先生あのね、こいつ匂いをくんくん嗅ぐのが大好きで敏感なんです。嗅覚は視覚の助けになりますか?」と聞いたところ「それはいいですね。もともと犬の視力は弱いですから、慣れた場所なら嗅ぐことでそんなに行動の妨げにはなりませんよ」と言う。やっぱり話早いわテンダラー。余計なこと言わんし質問に対する答えが早い。ちょっと安心しながら「おじいちゃんやからしゃあないなー」とサイゾーを抱き上げました。かーちゃんがサイゾーの目になったるさかいな。
ワクチン注射と肛門絞りを済ませて診察室を出ようとすると、テンダラーが「あの」と声をかけてくる。
「実は僕………」
「はい」(まさか?)
「今のうちにお話ししときたいのですが………」
「はい」(ナニ?ナニ?)
「この春から別の診療所に移ることになりまして、春までサイゾーくんに何もなければ今日で最後になるかもなんです」あら、そうなんかテンダラー。「どこに行きはるの?」「福島(大阪やで)です」だって。もし福島の方まで来てくれるんだったらカルテを持って行くけど、カルテはここか新しいところかのどちらかにしか置けないんだとか。「わかりました。行けない距離ではないので考えときます」と話して診察室を出ました。