十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

ララララララララランドツアー。

「遠くからでもすぐかーちゃんってわかったわ」と言いながら目の前に現れたケイさんは、とーちゃんに聞いてたとおりの小柄で華奢な女性。「西区の女って感じ感じ」とたたみかけてくる初対面とは思えないやりとりは、やはり長い間SNSで付かず離れず繋がってきたたまものか。「西区の女ってどんなんや」と笑いながらさっそく妹のアオコと3人でケイさんのクルマに乗り込む。いっぱいケイさんに聞きたいことがあるけどたっぷり時間はあるから大丈夫。晴天の京都をクルマは走り抜けていく。

 

女3人の車中のおしゃべりというのはころころと話題が転んでいくもの。ケイさんが長野に作ったロッサーナというお店の話、そこのシェフである立石さんのこと、私たち姉妹の関係、とーちゃんって実はさ、そういやケイさんララランド見ましたか?、見たよ。あのエンディングはあれやな、ブラピってアホそうに見えるのに映画当てるよね、ケラケラ、あ、トイレ大丈夫?みたいな。お昼とコーヒーの2回の休憩を挟みつつ滋賀、愛知、岐阜を抜けてようやく長野へ。大きな山が手をつなぐように連なる山脈はさすが長野の風景。「私、心の中で山のてっぺんによくスプーンを立ててしまうねんな」「あの山確かにユーハイムみたい」「懐かしいなユーハイム!」とまたケラケラ。長野市内に入り、すっかり町の風景に様変わりすると「ちょっとぐるっと周るな」とケイさんが言う。善光寺につながる一直線の石畳はなだらかな坂になっている独特の景観。善光寺さんの外側をぐるっとまわり、要所要所にあるスポットを教えてもらいながらホテルに到着し、いったんケイさんとはさよなら。こうして初めての私たちに町の全体像を見せてくださったのかと後から気づく。あれ、私ケイさんにもっと聞きたいことあったんちゃうかったっけ?

 

 

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今回の旅のメンバーは、大阪から私と妹のアオコ、東京からは以前高知に来てくれた(東京大阪でもよく遊んでいる)ガロさん酔う子夫妻に世田谷氏、そして何度かご一緒したことのあるマダムヨーコにサヨさんという女性ふたり。このおふたりはもう何度もロッサーナに通っているのですっかり長野通のよう。ホテルで着替えを済ませてロビーでみんなと久々の再会を喜び合い、さあロッサーナへ出発。

 

 

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とはいえまっすぐ行けない私たち。ふらふらと途中にあるワイン屋に吸い込まれたり(世田谷ムルソーお買い上げ)、洒落た花屋さんに立ち寄ったりしながら町の距離感をつかんでいく。そして18時になり、お店の前に到着。普段は19時オープンのところ特別に開けてくださったらしい。ありがたいことに。

 

 

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マテをされている犬のようにうずうずしながら店前に立っているとひっそりとランプが灯り、ケイさんと立石シェフが扉から登場。「お待たせしました、さあどうぞ」と迎え入れてもらう。あれ、さっきまで一緒にいたケイさんとは全然違う。そう、ここではお店のオーナーでありプロ。しかし何もかもかっこいい。

 

入ってすぐ左手にカウンター、その奥に小上がりがあり、私たちは奥のスペースへ。もとの焼き鳥屋の良さを残し、赤色を効かせた内装にほんと参る。花ひとつ、クッションひとつ手抜きのないケイさんセレクトのインテリアに目をやっているとケイさん泡をもって登場。そして

 

 

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待望の乾杯。「ようこんなとこまで来たなあ」とケイさんは言うけど、こんなとこやから来たんやとしみじみ思う。大好きで大切なこのメンバーでまた集えるワクワクした気持ち、憧れの場所にようやくたどり着いた喜び。幸せってこういうこと。こういうことがときたまあるのがいい。それだけ記憶にしっかり刻まれていく。

 

 

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ワインも料理もオーダーなんてしない。お店の思いを乗せてただただ運ばれてくるのをいだだくだけ。ひとつひとつの料理には綿密に計画された仕掛けが施され、ただ美味しいだけでない刺激と発見の爆弾が口の中で開く。それが会話になり、充足になり、もう一口と手が伸びる。笑いながら、うなずきながら。

 

 

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約4時間におよぶ夢のような時間はあっという間に過ぎて現実の世界へ。それでもまだ私たちのララランドは続く。明日はどんな躍る体験が待っているのか。