十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

ブイヨンのこと。

コピーライターの糸井さんが犬を飼い始めた話は自然とほぼ日で目にするようになって、書籍も購入してベイビー時代の「ニコちゃん」から「ブイヨン」という名前に変わっていったのも見守っていました。そう、まるで近所のおばちゃんがときたま目にして「かわいいねえ」「大きくなったねえ」と目を細めるような気分でブイヨンの成長を見ていました。うちの犬よりも2歳ほど若いけど、やっぱりお金持ちのお子な感じがぷんぷんしていて、幸せな犬やなあと思ってたな。着ているお洋服もお家のインテリアもどれも素晴らしく、うちのサイゾーのビンボーくささに笑えたものです。

 

ブイヨンが亡くなったと知ったのは先週の木曜日のことでした。1年ほど闘病をしてたことも知らなくて、てっきり幸せな余生を過ごしていると思ってたのでいろんな意味で驚きでした。いや、驚く以上に気持ちがざわめいた。ああ糸井さんも樋口可南子さんも、大変な思いを長らくされてたんやなあという気持ち、ブイヨンがいなくなってしまったんだという事実への落胆。近所のおばちゃんにとってもショックの波がじわじわときました。と同時にヨボヨボな足取りで目の前を通るうちの犬がいっそう愛おしく感じられたのは正直な気持ちです。

 

一度も会ったことのない犬にこんな気持ちになるのは、ブログ犬で有名だった富士丸くんのときもチコちゃんのときも同じでした。犬との接し方や見つめかたをときには学び、参考にさせてもらっていたので、私がサイゾーにしていることはこうして生かされているのかなと思う。糸井さんがマーキングをするブイヨンのことを「お手紙を読んで書いているのだ」と表現されてたときになるほどと手を打ったし、溺愛してるのに適度な距離感を保ちながら観察眼をもつスタイルも良いなあと思っていました。闘病期間が長かったようなので、覚悟の時間は十分にあっただろうと想像するし、少しは荷がおりたところもあると思う。でもこれからしばらくがきっと辛い。いなくなったぬくもりを、抱きしめることのできない侘しさを、使い手のいない食器やおもちゃを、どこにぶつければいいのかと途方に暮れてしまうと思う。きっとこれを消化するのに時間がかかると思う。うー泣けてきた。犬、いや動物と暮らしはじめて最も恐れることを乗り越えられる自信はどこにもないけど、サイゾーが喜ぶことをできるだけしてやりたいという気持ちを新たにしました。ブイヨンどうぞ安らかに。いつかサイゾーがそっちにいったら、仲良くしたってください。大好きなボール遊びがめいいっぱいできるといいね。