十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

「はしたない」という言葉。

昔読んだ向田邦子のエッセイに、
「一人暮らしをはじめるようになって、おかずをお皿に移すのが面倒になって、鍋ごとおかずを突くようになってしまった。しつけのキビシい父親のいた実家では、絶対にありえないことなのに。こんな自分がはしたない」
みたいなくだりがあったのを覚えている。鍋ごとおかずをつつくことがはしたない、か〜。昭和の女性を物語ってるよねえ。





え、何か?フライパンごと野菜炒めを食べて、おまけに缶チューハイまでいっちゃってますけど。向田さん、あいすみません。昨夜は仕事でちょい遅かったので、とーちゃんは外で食べてもらい、私は帰宅後簡単に野菜炒めで晩ご飯。一人のときは、もうえっか〜、とこうなってしまうのよ。ただ、こうして食べていると、さっきの向田さんのエッセイがちらりとよぎる。「はしたないよ、私」と昭和の私が心の隅でささやく。しかしもう一方で「お皿を洗わんでええ分、エコやんエコ」と平成の私がささやく。向田さんがもし今の時代に生きていたら何て言うんやろう。でもさ、なんか「はしたない」っていう言葉は奥ゆかしさがあっていいね。忘れてた言葉やけど、大事にせないかんね。






おい、犬よ、おっぴろげすぎ。はしたないぞ。