十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

こころの風船。

新しいオフィス

暑いがな。じりじり暑いがな、と思っていたらもうお盆休み。早いな〜、ついこの間ゴールデンウィークに高知に行って来たと思っていたら世の中盆休み。大阪はずっと天気いいみたいやしな〜、ああプール行きてえ。
今年は例年のように夏休みに高知に行けない。その理由の一つはおばあちゃんの初盆が13日の月曜日にあるからなのだが、もう一つ大きな理由がある。それはうちの事務所が引っ越すことになり、この土日を使ってやってしまうため、とーちゃんと私の休みが大きくずれてしまった。なので泣く泣く高知行きをあきらめたのだ。
うちの会社は今から11年ほど前、ボスともう一人のデザイナーの男性との2人で立ち上げた。小さなスペースで2人きり、ひっそりとはじまった。ボスの第一弟子だった私は同じ頃に会社を辞めていたため「とりあえず電話番しにきて」と誘われてバイト感覚で気軽に勤めはじめた。それから今までの約10年で、スタッフの数は15人になり、私はチーフコピーライターになり、小さなスペースだった会社は壁をぶちやぶって3倍になり、Macを使うのが当たり前になり、私は毎日犬を連れて自転車で通うようになっていた。
近所の定食屋や写真屋のおばちゃんたちや、いつものおでん屋のねーさん、薬屋のいつでも元気なおばさま姉妹、いつもビルをキレイに掃除してくれる中村玉緒に似たおばちゃんなどなど、顔を合わせば挨拶を交わす気さくなこの街が大好きだった。引っ越しが決まったころは離れてしまう実感がなかったが、引っ越しが近づいた今週になって淋しさがどんどん増してきた。いろいろ思うと泣けてくるので考えないようにしていたら、その分心の中にぽたぽたと涙の風船がふくらんでいく。もっとドライに考えよう、新しいオフィスはきっと気持ちいい、すぐに慣れるよ、うちの大きな大事な転機やねんから、せやし家は近所やん、いつでも来れるやん、まったく離れるわけじゃないねんから、そんなに大層なことじゃないよ。
そしていよいよ明日、引っ越し屋さんがうちの荷物をこの街から運び出していく。私を成長させてくれたこの11年間の当たり前が終わる。明日、心のなかの風船が割れないように、今はそれだけを願う。