十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

ジョージが鳴く。

ジョージっす

チリンチリンと風がなびくと、風鈴が音を立てる。うーん、なんて夏の音。うちのリビングには夏になると必ず風鈴がぶらさがる。第一号の風鈴は私が実家から持ってきたやつだったが、短冊がちぎれてしまい嫁いで5年でサヨナラした。で、この夏、第2号の風鈴として、私が東急ハンズで500円ほどで買ってきたのがこいつ。箱から出すと、店では気づかなかった「みちのく風鈴」とでかでかと書かれた短冊がぶらさがっている。「なんじゃこれ?」と最初は思ったが仕方ない。みちのく=山本穣治という短絡的なイメージで、この風鈴はジョージと名付けられた。
暑い、暑いとタオルを巻きながらご飯を食べる夜、ジョージは健気に小さく鳴いていた。風がなく、まったく音を立てない夜は「ジョージ鳴かないねぇ」ととーちゃんとため息をついた。ジョージは風が吹くと鳴くし、風がないとまったく鳴かない。とても素直でピュアなジョージ。でもこいつが「チリン」と音を立てると、どれほど暑くてもすーっと涼やかな気分にさせてくれる。
今晩、爽やかな風が通り抜けて涼しく、秋の気配さえ感じる。ついこの間まで頭にタオルを巻いて「なんとかならんか、この暑さ」とぼやいていたのに、これほど涼しいとちょっと寂しい。秋めいた風を受けて今もジョージはチリンチリンと鳴いている。今年、いつまでジョージは泣き続けてくれるのだろうか。仕舞ってしまうと夏が終わるようで、まだぶらさげたままにしてしまっている。