十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

わかっている犬。

鴨は〜?

昨日の夜、私の帰りが少し遅くなったので、とーちゃんは1人フレンチのオカモトさんで待っているという。いーのに、まっすぐ帰ってご飯作ってくれたらさっ、と思いつつ、サイゾーとともにチャリでオカモトさんに向かう。いつもの外席に座り、とりあえずとーちゃんが飲んでいた赤ワインの残りを飲みながら、オーダーしたソーセージを待つ。とーちゃんとなんやかんやと話ていると、サイゾーはテーブルそばのベンチに上がり、まずお皿の上の料理をチェック。そして「ワシのん、ないの?」と聞いてくる。皿の上には地鶏のパテが少し。「これはお前、食べられん。もうちょっとしたらパンが来るから、旨みだけ染みこませてあげるわな」というとちょっと笑いよる。「サイゾーもお腹ぺこぺこなんやな。前は食べへんかったけど、さすがに今日は食いたいんや」ととーちゃん。そっか、サイゾーもあの頃より大人になって、おいしい口も変わってるんや。人間でも大人になったら豆腐のおいしさがわかるようになるもんな、と納得。するとパンが来たので、とーちゃんが柔らかいところだけちぎり、パテの旨みを染みこませ「はいサイゾー、お待たせぇ」とサイゾーの口元へ。すると、プイっと顔をそむけ「いらん」と言う。とーちゃん撃沈。「もう、お前には何もやらん!!」とご立腹。サイゾーの口は全然大人になってないようだ。
そうこうしているうちに私がお願いしていたソーセージがやって来た。よく見るとソーセージの下にポテトのグラタン、そして横に3枚ほど鴨のスモークが添えてある。「これは?」と聞くと、「サイゾー好きでしょ。入れときました」とオカモトさん。「ありがとうございます」と私たちが言うや言わんやの間にサッととーちゃんの足もとに移動し、最高の笑顔で「くれ」というサイゾー。もうコイツにはわかっている、ここに一番好きな鴨があることを。「ほらほらそれ、ワシの鴨やろ?オカモトさんワシにくれたんやろ?はよちょうだいな」と訴えてくる。結局、1枚だけ私がいただき、残り2枚はサイゾーがペロリした。鴨を飲み込んだ後もいつまでも口の周りをぺろぺろ舐めて余韻に浸ってる。「さ、お目当てのもんも食べれたし、帰りますか、そろそろ」やって。とーちゃん、帰りましょうか〜。