十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

思いがけない夜。

コレですわ!

「…でな、お金持ってきてほしいねん」と、電話でとーちゃんが言う。確かにな、ワシが仕事で遅なって、晩ご飯つくられへんで。でもな、そんなしょっちゅうオカモトさんに行ったら、そらお金もなくなるわな。たまにはコンビニで弁当買って、その一杯のワインの半分の金額で、お腹いっぱいにしてよ…と思うが仕方ない。夜の9時頃、何とか仕事を片づけて、サイゾーをチャリのカゴに乗せオカモトさんに向かう。
着くと店の電気は薄暗くなっていた。「いいですよ、今日はもう閉めてるんで、サイゾーも一緒にどうぞ」と言ってくださるオカモトさん。カウンターの端っこの席に座るとーちゃんの隣にサイゾーを乗せ、そのまた隣に腰を落ち着かせる私。「まず白がいいですか?」と聞いてくださり、喉の渇きを潤す。この日は珍しくとーちゃん以外お客さんがいなかったそうで、早々に店を閉め、一緒に飲んでいたよう。見るとうちの親父はベロンベロンにあともう一息な状態で、「えらい大人しいな〜」と感心していたサイゾーは、目の前のお皿の上にぺろりと一枚残った鴨に釘付け。「お腹すいてはるでしょ?パスタでもどうですか?」と言ってくださり、もちろん断るワケもなく「ヤッタ〜」と子どものように喜ぶ私。
で、出てきたのがコレですわ。わかりますかね、トリッパの煮込みをパスタのソースにしてあるわけ。もう、おいしくないわけがないでしょう。トマトベースに玉ねぎの甘みとトリッパの旨みが溶けあって、パスタにしっかりとその濃厚な味が絡んでる。だからといってしつこくなく、するすると食べてしまえる、いや食べてしまいたいおいしさ♪フレンチのシェフはイタリアンを作ってもおいしいのね。またまたスゴイや、オカモトさんは。
そんなこんなですっかりまたご機嫌にワインをいただき、帰る頃にはとーちゃんはベロンベロン。私は予期せぬごちそうとワインを味わうことができ、ルンルン状態。で、サイゾーはというと「サイゾーは鴨好きやもんな〜」とあまりに釘付けなサイゾーを見るに見かねて鴨を3枚もらうことができ、超満足な状態。2人と一匹はこうして少し肌寒い夜空を気持ちよく帰っていったのでした。