十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

はたちのころ。

私は短大(しかも家庭生活学科やで)を卒業した20歳のとき就職が決まってませんでした。今ほどしっかりきっちりしたキャリア教育がなかったから、というよりナメてたんやろな。なんとかなるわと思いながら就活をちゃんとせず、卒業後はぷーぷーしてクルマの免許を取ることに精を出していました。そのうち短大に呼ばれて追加の求人票を見せられ、カメラスタジオの事務職として就職。社員10人くらいの小さなスタジオで、ひとり事務員として見よう見まねで会計の仕事をしてました。経理の仕事って基本ルーチンなのでそのうちある程度できるようになって(てか今みたいにパソコンでやるんと違う、全部手書き。振替伝票も給与計算も手書きなんやで)、会計士さんに「あんた見込みあるから資格取り」と勧められたけど「いやあ、よろしいわ」とお断り。ナメてるよね、いろいろね。

 

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いろいろあって2年弱でそこを辞め、経理ができるというスキルだけで広告制作会社の営業事務に転職しました。このときで22歳くらいか。デザイナー、コピーライター、カメラマン、スタイリストを抱える割と規模のある会社で若いスタッフが多く、まるで学校みたいな感じ。上司は優しいし、決まった仕事をやったらスタジオに遊びにいってスタッフを冷やかしてました。ほんまナメてるよね。気楽な仕事でしたがとにかくヒマでそれでも危機感もなく、要は何も考えずにぷーぷーしてました。そんな風にある日打ち合わせテーブルでぷーぷーしていたら、外部スタッフのコピーライターのお姉さまがたまたま打ち合わせに来られてて少し雑談。そのときそのお姉さまに「あなたコピーライターになったらいいのよ。この仕事は女性に向いてる仕事よ」と言われました。私が?コピーライター?考えたこともなかった。でもやってみたいな。どうやったらなれるのかな。と考えてそこを辞め、就活を本気ではじめました。ものすごい単純でシンプルなきっかけでした。

 

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当時の女性の転職といえば雑誌の「とらばーゆ」頼み。発売日の朝に買いに行き、数少ないコピーライター初心者可の求人を探してはアタック。あまりにも決まらなくて「そろそろ宣伝会議のコピーライター養成講座にでも通おうか、とりあえず」と考えはじめた矢先にポンと決まったのが今の前の会社です。企画制作会社、とはいえ社長と先輩のコピーライターのお兄さんのみの小さい小さい会社でしたが、社長は私に経理を兼任させたかったという目論見でどうやら採用されたらしい。無事にコピーライターアシスタントとして就職でき、ぷーぷーしていた毎日が嘘のように実地でがんがんがんがん鍛えられました。当時24歳。ちなみに今のうちの会社のボスは、このときのコピーライター兄さんです。

 

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今思えば、あのとき決して楽しくはなかったけど経理の仕事をしてたから営業事務にもなれたし、それが結果買われてコピーライターに転職できたことになります。運が良かっただけかもしれんけど、私がやってきたことは遠回りじゃなかったんやとつくづく思う。今の若い人は社会経験のない学生のうちから「自分の適性」とか「やりたい仕事」とか「めざすキャリアプラン」とか考えさせられて大変やなと思う。まずわからんやろう、そんなこと。だからとにかくバイトでもなんてもやってみてその世界がアリなのかナシなのかを自分で取捨選択していくしかないかなあと思う。ただ仕事の本質はある程度やらんとわからんものなので、バイトならせめて1年はやってみた方がええかな。どんな仕事にも適性はあるもんね。私は絶対接客系は無理です。仕事ではきちんと人と話すしコミュ力はある方やと思うけど、初対面の人と話すのがとりわけ好きなタイプじゃないもんね。

どんな経験も絶対ムダにはらないことはこの身をもって証明します。わからないと留まっているならまず何でもいいから動いてみることが、やりたいことを見つける近道なんやとかつてぶーぷーしていたBBAは知っています。そして私もいつか、あのとき指南してくれたお姉さまのように、誰かにこの世界の素晴らしさを伝えられる人になれたらと思います。