十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

豚太郎狂想曲。

もともとは東京や大阪の友人と一緒に行くはずだった今年の高知旅。コロナの影響でみんなが断念し、私ととーちゃん、妹のアオコとの3人で行くことになりました。1週間で3万弱のカローラフィールダーをレンタカーして(安い!ユルい!)、荷物を詰め込み大阪を出発したのが朝の5時半。道はとても空いていて、スイスイと5時間程度で高知に着きました。

 

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今回はサイゾーがいない、高齢者の多い親戚の町には寄らない、という条件によって、うちのオジイの故郷である津野町葉山の宿に宿泊。ここは山に囲まれた自然豊かな静かな町で、いつも遊んでいる新荘川のすぐそばにあります。墓参りを済ませてから河原に到着し、すぐにとーちゃんがタープを設営。これでアジトが完成し、ひと安心。チェックインすると私ととーちゃんのお部屋は「いたどり」、アオコのお部屋は「せり」というナイスネーミングでテンションアップ。さて本題はここから。私たちの晩ご飯についての騒動です。

 

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ここは人里離れた場所なので、歩いていける範囲に飲食店はほとんどなく、小さな居酒屋とラーメンチェーンの豚太郎(とんたろう)の2件のみ。初日の夜はこの居酒屋まで歩いて行き、まあまあそれなりの内容に満足しました。結果2日目の土曜日は必然的に「豚太郎やな」という選択になります。「豚太郎はラーメンだけやなくサイドメニューが充実してるらしいからそれなりに飲んで食べられるんじゃね?」という会話をして、この日は夜ご飯豚太郎ありきの予定のもと「昼ごはんには唐揚げも餃子も避けなあかん」という「夜豚」シフトで過ごしました。

 

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川遊びから宿に戻り、お風呂に入っていざ豚太郎へ。てくてくと歩いて店に着くと、『今日の営業は予約のみとさせていただきます』という予期しない看板が!なんやて!もううちらのクチは餃子唐揚げラーメンなんやで!どうしてくれんのよこれ!だいたいチェーン店がこんな仕打ちするか!と怒りぷんぷんな私たち。仕方なく「昨日の居酒屋に行こう」という選択にならざるを得ません。「めっちゃ気に入ったと思われるで」「そこまでではないねんけどな」と言いつつのれんをくぐりました。

 

 

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3日目は日曜日。「今日こそ夜は豚太郎やな」と今回はしくってはならぬと昼からネットで「休業日は月曜」をチェックして大丈夫なことを確認し、念には念を入れるべく電話で予約することに。ところが何度かけても電話に出ない。「忙しい時間帯やからかな?」「いやまだ昼前やで?」としつこくかけ続けたところようやくおじさんが出た。「すんません、今日は臨時休業させてもろてるんです」はあ?「では明日は?」「月曜は休みなんです」はあ?連チャンで休むの?このかきいれ時に?「わかりました、ありがとう」と電話を切りました。

 

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「なんかさ、大して好きでもなかったコに振られた気分なんやけど」とアオコが絶妙なコメント。まさにそれ。選択肢がないから遊んでやろうかくらいの気分なのに向こうに拒否られ「な、な、なんなんそれ?」と憤慨している感じ。ここまでくるとこっちが好きで追いかけてしまっている逆転現象。クッソ豚太郎。食べたかったぞ豚太郎。どんな餃子出しとるんや豚太郎。「腹立つわー」と言いながら、結局4泊5日のこの旅で一度も豚太郎の扉を開けることはありませんでした。

 

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「あんまり腹立つから来年ここに来たとしても豚太郎には行ってやらん」とアオコが言う。私は未練たらたらで「いやーねーちゃんは来年こそ行きたいな」「僕も行ったらええと思うよ」「なんかさー悔しいやん。こんなふうに弄ばれてさ」「でも実際、選択肢ないやん。あの居酒屋こそねーちゃんはどっちかいうたらいらんかな」と最終日の夜に部屋で飲みながらやいやい。「そやけどな、豚太郎が休んでくれたおかげでええことあったやん」と親父がなだめる。そう。実はもしあのとき豚太郎が普通に開いていたらこんなことはなかったという結果オーライの出来事があったのです。

 

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予約者のみの看板を見て絶望の淵に立たされ、居酒屋にとぼとぼと向かっていたあのとき。高知1号店のセブンイレブン前でどこからか私たちを呼ぶような声がする。振り向くとセブンから出ようとしている白いシボレーからニコニコとした見慣れた顔が。「あ!コータ!」と親戚のヤングとばったり偶然出会ったのです。彼は檮原の中学で教師をしていて、最近娘が生まれたばかり。世間話をして別れ、「いやあこんなところで会えるとはねえ」「豚太郎のおかげやで」と話しながら居酒屋ののれんをくぐったのでした。

 


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そしてもうひとつは、日曜日の夜のこと。昼間に豚太郎に振られて晩ご飯どうするー?とあーだこーだ話していました。クルマで行くならいくつも店があるものの、そうなると私かアオコのどちらかが「酒を飲めない」という致命的な状況になります。クルマで行って運転代行を頼む、タクシーで行ける範囲の店にする、などなどやんやと検討し「そうや、ここからクルマで5分程度先にあるカフェやったらタクシーでもそんなにかからんのと違う?」「あそこは夜もやってるって言うてたな」と閃き、まずは電話で営業を確認。OK!タクシーの手配も完了!とカフェ「もくもく」での晩ご飯が決まりました。

 

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ビールで乾杯してメニューを見るとどれもいい感じ。海老とアボカドのかき揚げ、ゴボウの素揚げ、胡瓜の和物、冷奴などを頼んでみるとどれも丁寧に作られているのがわかる美味しさ。おまけに頼んだメニューが切れていたお詫びとしてマヨネーズ入り卵焼き(これがまためちゃくちゃ旨い!)を出してくれるなどホスピタリティも素晴らしい。オーナーのおじさんやスタッフの女性がそれぞれ気さくに話しかけてくれて、大阪者を迎えてもらえるうれしさが込み上げる。このスタッフの女性がすらりとした広末涼子似の超美人で親父がデレデレやったことも書き残しておきましょう。「写真撮ったらあかんかな」と言うので2人で「あかーん!やめーい!」と止めておきました。

 

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もし豚太郎が普通に開いていたら、コータに会うこともなく、夜のもくもくにも行かなかったと思われます。なので「豚太郎のおかげでええ思いをした」とも言えます。気持ちは複雑ですが、「これで良かったとしよう」という感じかな。しかしまあ豚太郎に振り回されたわ。で、豚太郎、どんなサイドメニュー出しとるんや。来年こそは確かめさせてもらうで。覚えときや。

 

最後にラーメンのクチが収まらないので、最終日の夜は私が酒を飲まずクルマでしか行けない葉山の自由軒でラーメン!堪能したで!

 

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