十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

幻のパクチー。

「かーちゃん大変や。パクチーにアブラムシついてるわ」ととーちゃんが言い出したのは1ヶ月ほど前だったでしょうか。「え、大丈夫なんかパクチーは。ちゃんと育つんか?」と聞くと「わからんけどとりあえずせっせと取ってる。大丈夫と思うねんけどなあ」と言う親父をこっちは信じるしかない。「任せるで。みんなにパクチーパーリーするって声かけてるんやしな」と念を押すと「わかってるって」とその責任の重さに気持ちを引き締め直す親父。

 

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「ああもう毎日200匹くらいアブラムシ殺してるわ」とある日の晩ごはん中にとーちゃんが嘆き出した。薬はつかってるらしいけどさほどの効果が出ず、見つけては殺す、見つけては殺すのとーちゃんvsアブラムシの日々。それでもまだ私は信じてたのです。まだお腹いっぱい食べられると。みんなで鍋ができると。なのに…

 

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「ごめんかーちゃん。もうあかん。悪いところ全部捨てるし」と、親父アブラムシに完全降伏。何やってんだい。てか何が敗因やったんか。今回の失敗を次に生かすとしたら何なのか。タダの失敗なんて許さへんで!「それがわからんのよ。ただな、夏のパクチーは難しいんやって。素人にはハードルが高すぎたようや。あとは種の植え方が浅すぎたんかもしれん」ならしい。ともかくこの半ちゃらけなパクチーをせめて味わおうと思いまして

 

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作ってみたよタラのソテーパクチー添え。なんてビンボーくさいのかしら。話が違いすぎやしませんかい?このくらいのパクチーやったらスーパーで200円で売ってるわ。今回のこの件だけでどでかいプランター買うて、土買うて、どんだけ投資してるねん。元取れへんやんか。

 

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「すまんかった!」と珍しく頭を下げた親父、反省と後悔にかられているよう。ところがスグにむくりと頭を上げて「ほんでなかーちゃん、パクチーには秋蒔きってのもあって、こっちの方が育てやすいらしいんよ。なんせアブラムシが出にくいんやって。それにいっぱい出来たら鍋にするにもちょうどいい季節やん。ボク今度こそいけると思うんよ」やて。懲りひんな、まったく。「でもなこのパクチーの土をそのまま使ったらまだアブラムシが残ってるからあかんねんて。だからこの土はしばらく寝かせておいて、もう一個プランターと土買って……」

もうええわ!