早く行ってもやることないので、結局夕方にお通夜が行われる会館についた。おばあちゃんの故郷である高知からもたくさん親戚が来てくださっている。おばあちゃんの故郷は高知県の海のそばで、私たちも毎夏遊びに行っている。親戚の方々にもついこの二ヶ月ほど前にお世話になったばかり。ふだんなら年に一度しか会わないのに、今年は思いがけずこんなに早く再会することになってしまった。
92歳という大往生でどんどん意識も薄くなってきていたので、みんなもう覚悟はできていた。だから通夜の場もいつもの宴会と変わらないくらいにぎやかだ。子どもたちは走ってる、私らはつまらない話でげらげら笑ってる、そしてみんな飲んでいる。ふつうのお通夜ならビールくらいでなんとなく場を過ごすだろうが、うちらはそんなもんで済まない。「中々あるで」「蔵の士魂あるで」と焼酎の一升瓶が数本スタンバイ。お寿司をいただきながら焼酎のロックに切り替え、おばあちゃんのお通夜であることを忘れてしまいそうなほどにぎやかに時が過ぎた。
ちょっと酔っぱらってきた。ぽろぽろぽろぽろ涙が出てくる。おばあちゃんの漬け物がおいしかった。お祭りの夜はいつもみつ豆をつくってくれた。おじいに隠れてタバコを吸っていた。前掛けとつっかけで近所の百貨店に買い物に行ってた。話をしてもぶっきらぼうで、電話を切るときもそっけない。特別私ら孫を甘やかすことはないけど、やさしい人やった。おばあちゃんがいなくなるという寂しさと、お母さんを産んでくれてありがとういう気持ちと、ここにこうしてみんなで居られる幸せがこみあげる。みんな楽しいやってるから大丈夫やで、ありがとう。この人の孫に生まれてほんとうによかった。
酔っぱらったから泣いてるんちゃうで、お酒入ったから素直になれて大事なことに気づけたん。今日はこれから最後のお別れに行って来ます。