十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

髪型談。

とーちゃんの耳

<昨日の続き。酒を飲みながらいつものおでん屋さんでのどうでもいい話>

「でさあ、ワシ髪の毛切ろかなあと思てるねんやわ」
(注:ワシことかーちゃんは現在、髪の毛がぼーぼーに伸び、背中の肩胛骨がすっぽり隠れるくらいになってしまっている)
で、とーちゃん。「なんで?散髪代もったいないやん」「(散髪代のボケは素通りして)だってな、こんだけ伸びたらおだんごにしてまとめな落ち着かんやん。それで最近新幹線よう乗るやろ。ほんだらこのおだんごがものすごい邪魔でシートに頭が収まらんわけよ。シートで寝るにも宙に浮いたみたいになって気持ち悪いわけ。もういっそのことぱつーんと切ってしまおうかなと…」「アホやなあんた。創造力がなさ過ぎるわ。おだんごを後ろにまとめようとするからそうなるわけ。じゃなくてさ、おだんごを前のおでこのとこまで持ってきたら引っかからへんからええねやんか」「…前?」「そうそう、ここここ」とおでこを指すとーちゃん。「コムデギャルソンのショーでも多分ないで」「そういう常識に捕らわれるのはよくないよ。意外といいで」…「やってみよか?」
おでん屋さんに居ることにもかまわず、私は後ろにおだんごにしてたゴムをほどき、前に持ってくる。「そうそう、そういう感じ!いいやん、かーちゃん」「これで自転車で家まで帰ってもおかしない?」「…おかしないよ」「そう?」「うん」「これで明日会社行っていい?っていうか、新幹線に乗ってても変やない?」「…まったく!」「ふうん」
とそこで、おでん屋のお姉さんが私らのテーブルに来た。「何してんすか?」いやかくかくしかじかで…。と説明すると、「いいじゃないっすか、もっとね、このおだんごを大きくしたらめちゃかわいいですよ」「そういう問題?」「全然いけてますよ」
世の中、何を信じたらいいのやら。私はおでこ上にあるおだんごをほどき、さくっと普通位置に戻す。やっぱり、髪短くしようかな〜。