十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

ワイン→タルハイ→ワイン.2

ニューパラダイス

「私、タルハイ〜!」「ボク、生中」でいっぷくの乾杯。アテに頼んだのは串カツ、シシャモ、小芋のたいたん、きずしなどなどおっさんメニューの数々。この店に来るのははじめてだったが、アテがいっぱいあって、タルハイが飲めて、仕事の早い店員のおっちゃんがようさんおって、安い、という私たちの要望をかなりかなえている。「なかなかええなあ」「うん、ビンゴやね」と感想を確かめ合い、さらに杯を重ねていく。
「でさあ、おせちどないなってんの?」「何が?」「とーちゃん、おせち部長やんかいさ。ええとこ見つけたんか?」「それはもう、いろいろ考えてるんよ〜」。。こういうときのとーちゃんは、基本、何にも、考えていない。「さっさとええのん見つけて、ちゃっと決めてしまおうよ」今年の我が家のおせちは中華でまあまあおいしかったが、私は今度はできればイタリアンでいきたいという要望を出していた。「イタリアンやろ?なかなか無いんよ、いいところが。まあ、ボクには秘策があるからさっ」「何や、その秘策って」「ほら、和食職人のまさじろうが今世界中を旅してるっていうてたやん。どうやら日本に帰ってきてるみたいなんよ」「…」「もしかしたら、うちにぃ、まさじろうが来るかもしれへんで」「…」
お察しの方もいるだろうが、まさじろうとはとーちゃん自身のことである。ごくたまに料理を作ってくれるときに、こういう名前を勝手につけて職人気取りを楽しんでいる。「まさじろうさん、イタリアンなんか作られへんやろう」と私が言うと、「バッ、バカにしたらアカンでぇ〜。まさじろうはスゴイんやから」と返す。「しかし、かーちゃん、何やな。あんたな〜んにもせえへんつもりなんやな、正月も」と今度は私が追い込まれるはめに。「当たり前や。ワシは何もせん」と開き直っておいた。
そんなこんなでほろ酔いになって帰宅。時間はまだ6時。「ほんだらワイン開けるで〜」と余裕のあるクロニョーロを開けてこの日3回目の乾杯。お腹はいっぱいなので、イタリアフェアで買ってきたサラミをつつき、ワインを飲む。まさじろうさん、正月来てくれるんかな〜。あの人肝心なときに“都合悪い"いうてけえへんからな〜。アテにならんし、自分でおせち探しとこ〜っと。