十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

マリナラ。

昨日はうちのお母さんと妹ふたり、姪っ子ととーちゃんの6人で、近所のトラットリアデジナーレさんで夕食を楽しみました。カウンターにずらりと並んで生ハム、フルーツのサラダ、ゴルゴンゾーラのパングラタン、ニクニクニク(イチボとミスジとラム)、そしてパスタをワインと共にがっつり。最後のパスタは私とお母さんが隣同士なのでシェアすることに。この日のおすすめ「ボンゴレビアンコ」を見つけたので、「お母さん、これレナウンミラノの、ほれ」「あーあれな、マリナラな」となってオーダーすることに。

 

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うちのお母さんはかつてお父さんの会社の事務を担当していて、時折早退けして百貨店なんかの買い物ついでにひとりでランチをしてました。銀座アスターではあんかけ焼きそば、そして当時あったイタリアンのレナウンミラノという店では「マリナラ」という名のボンゴレビアンコがお気に入り。たまに一緒に「マリナラ食べに行こか」と連れて行ってくれたこともあって、ちょっと小粋なまちのレストラン風の店構えに幼い私はときめいたもんです。「で、なんでマリナラっていうの?」と昨日聞いてみたけど「さあ知らん」ならしい。パスタが出てくると「美味しいわ、スープを吸い込んでパスタがもちもちや」「ほんまや、手打ちのリングイネやもんな」と2人でぱくぱく。浅利の殻の裏側をゴシゴシこすって貝柱を外しながら「なんでこの時期にこんなに大きな浅利があるんやろ。どこのやろ」とお母さんには浅利の産地の方が気になったようです。お店の人に聞けばよかったね。

 

調べてみるともうレナウンミラノはなくなってるようです。ジューススタンドのエイトも、うちのお父さんがお母さんに熱烈のころに毎回ケーキを買っていた喫茶プランタンもなくなってしまって、あの頃に戻りたい気持ちがたまによみがえる。プランタンの半地下のテーブルで透明のイチゴジュースを飲んだこと、エイトのおじいちゃんに「その液体なに?」と聞いたら「教えられへん」てピシャっと言われたこと、あの窓から見下ろした道頓堀の景色なんかが記憶の底から湧いてくる。いまもしレナウンミラノがあったら、白ワインと一緒にマリナラをいただいて「で、マリナラってどういう意味?」って聞くのにな。かなわないことにこそ、憧れが募ります。