十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

行けない理由。

9月21日(水)の朝、いつものようにお弁当を作ってさあ会社へ、と出かけようとしたとき、同僚からのSkypeに気づいた。何かと思って見るとコロナの陽性になったという内容。前日に約1時間、一緒にランチをしたので(私は彼の向かい側)この瞬間から私は濃厚接触者になってしまった。リモートになるとしてもパソコンが必要なのでひとまず自転車で会社に行き、ボスの見解を確認したところ「症状が出てないなら会社にいていい」とのこと。念のためと持参していた体温計で熱がないかをチェックしつつ仕事を進める。とはいえやはり落ち着かない。なんとなくしんどくなってるような気がするのは単なる気のせいか。人間って簡単に左右されるよなと思いつつ仕事にかかる。

 

昼前にお母さんと妹2人と私の4人のLINEルームにメッセージが入っていることに気づいて見ると、高知でずっとお世話になっていた通称ターンが朝9時頃に亡くなったとあった。詳細は何もわからないと。先日ブログに書いたように、奇跡の復活を遂げて自分でご飯も食べられるようになってたというのに。危篤の知らせもなかったのに。濃厚接触者状況と突然のターンの死で「なんでこんなことに」という思いしかわいてこない。ともかくちゃんと仕事を済まそう。ひとつひとつ終わらせようと気持ちを切り替えてまた仕事に向かう。時おりLINEを覗きながら。

 

その後の知らせでお通夜のようなものはなく、24日(土)の13時からいわゆるお葬式(神道なので葬祭というのかな)が執り行われることがわかり、お母さんと妹2人は高知に向かう準備にかかる。私は濃厚接触者であり、3日間ほどは発症する可能性があることから高知行きは諦める。とーちゃんも事情を理解してくれて「10月か11月に2人で墓参りに行こう」と納得してくれた。幸い私は今のところなんの症状もなく無事にしている。そしてお母さんと妹たちは今朝5時に大阪を出て高知に向かった。長らく会えなかったターンに最後の挨拶をするために。

 

さっき妹から届いたLINEでは、ピンクの口紅をつけてもらって穏やかな表情だったらしい。コロナが落ち着いたら、来年の夏には、と思いながら結局こんな結末か。3年前にターンの家の倉庫にある荷物を取りにいく必要があったときにも、直接私たちが取りに行くことは憚れ、わざわざ地元の親戚に荷物を出してもらって引き上げることがあった。近づくことさえ許されないあの状況。「来ないでくれ」と言われるあの心境。誰が悪いわけではない、全部コロナのせい。もしコロナのない世界がパラレルであるのなら、まったく違う結末になっていたような気がする。そんなことを考えてもなんの意味もないけど。

 

90歳を過ぎたおばあちゃんが亡くなった、ということは天寿をまっとうできてどちらかと言えば「苦しまなくてよかった」とされがちなことやけど、今回私はなかなかそうは思えない。サイゾーのいない夏もあそこで過ごしたかった。「お帰り」と迎えてほしかった。「のりちゃん」と私を呼ぶ声を聞きたかった。ターンの作る味噌の少ないお味噌汁を食べたかった。「今日も川に行くんか」と言われたかった。川から帰ったときに「早うこっちおいで」とクーラーのきいた部屋に招いてほしかった。ささやかに話す誰かの悪口とか噂話を聞きたかった。「来年の夏まで元気でおるんやで」と言いたかった。暑い日でも雨の日でも国道まで出て手を振ってくれるターンをバックミラー越しに見たかった。冷たくなったターンにさえ会えないのは全部コロナのせいやないか。なんやねんお前は。

 

お母さんが棺に入れると用意したのがこの写真。こっちを見てるのがお母さん、その左隣は父方のおばあちゃんで抱かれてるのは私。後ろで微笑んでるのが若き日のターンです。生まれてからずっとつかず離れず見守ってくれてたんやなと改めて思えて、泣けて泣けて悲しくて腹立って腹立って仕方ないです。

 

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