ニヤニヤしながらスマホを眺めていると何となく気配を感じたので目線をあげたら驚いた。そこに12月がいた。「い、いつのまに!」「いやもう丸一日こちらにおりましたけどね、あなた全然気づいてくださらなくって」とこれまたいつのまにか緑茶をすすっている。「ああそれ、先週の親父を止めるなパーティの動画ですか。楽しそうで何よりです」「おかげさまでとてもおもしろかった」「そうでしょうそうでしょう。あなたあたしの一年前の忠告をなにひとつ活かさずにこのパーティの準備に勤しんでおられた」「嫌味ですかそれは」「ほんの少し」「いやだってこれだけのドッキリを仕込むとなるとそれなりに準備が」「わかりますわかります。皆まで言わなくてもわかります。Tシャツひとつ発注するのも面倒なものですから」とうなずく12月。「で本題はここからです。あなた去年私に文句をおっしゃいました。来るのが早すぎると。なので私はあなたにご提案しました。おせちとお歳暮の手配や大掃除を早め早めにやっておけばいいと。なのにあなたは私を無理やり眠らして無きことにしようとなすった」「あのときはすみませんでした。ほかに方法が思いつかなくて」「まあ、いいでしょう。過ぎたことをつべこべ言っても意味はない。要は今年はどうするのかってことですよ」とポンと膝を打つ12月。
「で、何かひとつでも済まされてるんですかね」と私の顔をぐいっと覗き込んでくる。「まあ、やってないわけじゃないです」「何を?」「えーっと、とーちゃんに蒸気で掃除できる機械を買ってあげました」「他には?」「そうそう、昨日九条の鶏肉屋さんでお正月用の鴨肉を予約してきました。今回はフグを止めて鴨鍋にするの」「ほほう。で?」「あとは、、、何もしてないです」と小さくなっていると12月のやつ背筋をぐんと伸ばして「私が来たということは今年ももうあと1ヶ月しかありません。どうするおつもりで?」と責めてくる。来週の日曜は家族で集まる予定があるので本気出すのは15日から。うちはとーちゃんが家にいるので平日も頑張ってくれるはずと言うと「そんな曖昧な予定であなたがやりたい大掃除がきちんとできるのか、年賀状はどうするのか、あたしは不安しかありませんよ」と名古屋土産に買っていた味噌饅頭をかじりながら「ははん」と言う。
「12月さんあのね、あなたに不安を感じてもらう必要はないと思うんですけど」「おやま、逆ギレですか。あたしゃあなたのこの1ヶ月を心配してわさわざ早めに来てあげたというのにこの言われようだ。じゃあ勝手になさい。どうなってもあたしのせいにしないでくださいよ。それだけ言いに来たんですからね」と味噌饅頭の包みをぎゅっと握ってぽんと置きスタスタと出て行った。くっそ12月め。覚えとけ12月め。あんたなんかあっという間に過ぎてしまうんや。やるで大掃除!年賀状も早めにやるで!とーちゃん頑張るんやで!