十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

とーちゃんノート。

ぜんぶ手書き

17日の日曜日に酒好きの知り合いを集めてワインのテイスティング会を我が家で開くことになった。1,000円台から6,000円くらいまでのワインを5本揃え、色、香り、飲んだ感想で価格と国を当てていくという内容。私は友人たちと一緒に回答者側になり、とーちゃんがワインのセレクトから当日の進行までを一手に引き受けることに決定。それからというもの、とーちゃんはウキウキとワインのセレクトに励み、私に情報をもらすことなくせっせとワインを買い集める。
あるとき、ちらりと見せられたのが何の変哲もない大学ノート。見せてもらえる範囲で中を開くと、1ページに1銘柄の割合でワインの情報が書かれてあり、ビンテージや作り手の名前、味の特徴などのデータがぎっしり。それも全部手書き。「…あんた、ヒマやな」「まあ、わりとな」と言いながら、うれしそうに解説をはじめる。「ほらここにな、ワイングラスの絵書いてあるやろ?」「ほんまや」「この白いグラスの場合は、買ったけど飲んでないってこと。で、こっちみたいに赤く塗ってあったら飲んだという印にしてるわけ」「へー。でもグラスの絵がない銘柄もあるで?」と聞くと、「ああ、これはな、欲しいけど買ってないってことなんよ。いつか買おうと思って」とニタニタと語るとーちゃん。ほんまにうれしそう。
とにかくこのノートにとーちゃんセレクトのワイン情報が記され、飲んだ感想も残していく。何ともマメな仕組みだが、手書きだけに愛情を感じる。ここに書かれたワインリストの中からどんなワインがテイスティング会に登場するのか。それを知っているのは今のところ神様ととーちゃんだけなのだ。