十杯機嫌 〜飲んで飲んで、たまに犬〜

酒好きふたりと酒嫌いな犬。

20年モノ、20年まえ。

20年モノ

昨日の夜に飲んだ赤ワイン、イタリアはトスカーナの「ヴィノ・ノビレ・モンテプルチアーノ・リゼルヴァ1987」。ワインを飲まない人にはなんのこっちゃわからんだろうが、トスカーナ州のモンテプルチアーノという場所で20年前に収穫されたぶどうのワインということ。ちなみに生産者さんはカンネットさん。20年も経っているので「もうギリやで」ということで開栓とあいなった。
香りをかいでみる。…ふわっと甘く期待させる香り。味わいは…うーん、まあまあというところか。私たちはインパクトの強い味が好きなので、そういう意味では確かに弱い。腐葉土やカカオ、皮革、バニラなどの複雑で深みのある香りと解説されていたようだが、そのバランスをぎりぎりもたせている感じ。つまりは「もうアカン」と死にかけのおじいちゃんが、必死のパッチで頑張ってるような味わいなのだ。
「でもさ、20年前に遠い遠いイタリアで摘まれたブドウが今こうして日本の端っこで日の目を見てると思ったら、何やスゴイよな〜」「ほんまやな」「こいつは20年間、開けられるのを待ってたわけやからな〜。褒めたらなアカンね」その後カンネットさんがこのワインを作った頃、20年前って何してたっけと話が広がる。私は短大を出て就職せずプープーしてて、ようやく小さなスタジオの経理事務として勤め始めた頃か。あの頃はまさか40歳を前にしてもまだ仕事をしてるなんて、それもコピーライターとして働いてるなんてこれっぽっちも考えていなかった。30歳を過ぎてからこんな変テコなオヤジと結婚して、毎日酒飲んでわーわー言うてるなんて、あの頃の私が思い及ぶワケがない。
この20年で、いっぱい飲んだ、いっぱい笑った、いっぱい泣いた。胸がチリチリと痛む思いも何度も味わった。その分ちょっとだけいろんなことがわかってきたように思う。このワインが時間をかけて熟成してきたように、人生もきちんと熟成されているのね。